鬼の出る駅
2021.03.23
商品部Sです。
房総半島のローカル線小湊鐡道は大正14年に開業し、
今でもレトロな雰囲気の駅舎が開業当時のままの姿でいくつか残っている事から
「小湊鐡道駅舎群等」として、国の有形文化財に登録されています。
そんな小湊鐡道の駅舎の中でも人気の1つが「上総鶴舞駅」です。
上総鶴舞駅は木造の駅舎で大正時代の趣きを色濃く残しており、
周辺に広がる田園風景と相まって映画やドラマやCM、
ミュージックビデオやCDジャケットなど多数のロケ地として使用されています。
ホームから見渡す景色も関東圏とは思えない風景が広がっており、
鬼と柱が死闘を繰り広げる、「無限列車」が走ってくるのではないかと錯覚するような景色です。
駅舎は「関東の駅100選」に認定されており、駅舎内には認定書も掲示されています。
2018年の1日の平均乗客数は14人で、現在では当然無人駅となっていますが、
有人駅だったころの名残りの改札や事務所も当時のままの姿で残っています。
線路の脇には旧鶴舞発電所が今でも建っています。
旧鶴舞発電所は大正14年の開業当初の発電所で小湊鐡道の各駅舎の電灯用として利用されていました。
昭和2年には近隣の村への電力の供給も始まり、昭和17年まで使用されていたそうです。
こんな風情のある風景の中に、ひときわ奇妙な建物が駅の傍らに建っています。
この建物は何だと思いますか?
なんと、公衆トイレです。
これは、以前の社員便りで紹介した小湊鐡道飯給(いたぶ)駅の
「世界一広い?トイレ」を設計した建築家藤本壮介氏の作品(?)で、2018年に完成したトイレになります。
以前の公衆トイレもホームの端に残っていて、今でも使用は可能なようです。
(奥に見えるのが新しい公衆トイレです)
ただ、こんな古臭いトイレなので、夜には決して入れない、
本当に鬼が出てくるんじゃないかって思ってしまいます。
新トイレは右側が男子トイレ、左側が女子トイレで、
間の通路には何故か木が一本立っています。
(小湊鐡道HPより)
公式HPの写真だと、「豊かな自然を感じられるトイレ」という
コンセプトを見て取る事も出来ますが、全く手入れのされていない現状では、
「床から出てきた大木が天井を突き破った」様にしか見えません。
「何という事でしょう。匠の技によって生まれ変わった公衆トイレは、
太陽光をふんだんに取り込む開放的な天井となっていて、
地面から天に向かって伸びた1本の木は利用者を明るい未来へと誘う、
自然との調和を考えた設計となっています」って
ナレーションを事前に考えて見学に行きましたが、期待を思いっきり裏切られる有様です。
トイレは至って普通なのですが、便器に座ると前にも一本の木が生えています。
ここも天井が無く吹き抜けになっていて、
「雨風が強い時に用を足すのは大変。こんな狭い空間で、もし扉が開かなくなって、
個室の中が水で満たされてしまったら、水の呼吸を会得してないと助からないな」
なんて思いながら、便器に腰かけていました。
飯給駅の「世界一広いトイレ」は、千葉県の補助金1000万円をかけて建設されたとの事です。
この上総鶴舞駅の公衆トイレがいくらの費用で建設されたのかは調べても分かりませんでしたが、
1日に14人しか乗降客がいない駅に、こんなトイレを税金を使って作るなんて、
市民はもう少し鬼になって怒った方が良いのではと感じた次第です。