日本一小さな猛禽類「ツミ」
`夏の蒸し暑さも和らぐ早朝、いそいそと妻と散歩に出かける日が続いている。
この夏、初めて出会った日本一小さな猛禽類「雀鷹(ツミ)」に会いに行くためだ。
千葉市の高層マンションが立ち並ぶ住宅街にある公園。
まさかこんな人通りの多い場所に、絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されているツミが巣作りしているとは思いもよらなかった。
まずは、親鳥の姿と巣立ち間近い雛を探す。高い松の枝に営巣しているのだが、7月になると雛たちは、巣立ちの準備に余念がない。
数えてみると4羽いるが、それぞれ大きさに違いがあるのは孵化するタイミングによって個体差があるからだ。
今にも飛び立ちそうな雛、巣の外で羽ばたきを繰り返す雛、まだ巣の中でフワフワの羽毛の目立つ雛もいる。
成長するとオスがヒヨドリ、メスはやや大きめのキジバトくらいになり、お腹には鷹らしい縞模様がはっきりと出る。
気性は荒く、大きさで上回るカラスを攻撃することもあり、餌は雀、シジュウカラ、ムクドリなどの小鳥やセミを主食としている。
子育てはメスの役割で、狩りをするのはオスの仕事である。
オスの目は獲物を血眼で探すため赤いのではと、まことしやかに言われることもある。
メスの目は綺麗な黄色である。
ツミが営巣する周辺には、青く長い尾のエレガントな姿から想像できないギーギーという声で鳴くオナガの姿をよく見ることがある。
これは、オナガが苦手とするカラスから身を守るため、猛禽類ツミの作る安全圏に身を置いているのだ。
このような両者の関係をカンパニーと言うそうだ。
ツミは、餌場や水場への飛行ルートがほぼ決まっており、ルートの下に人がいると警戒して飛ぶことができず、餓死の危険もある。
立ち止まっての観察はせず、遠くから観察するのがマナーだ。
雛は5羽いたのだが、最後の一羽は兄弟に巣から押し出され落下してしまった。
種の保存のためとはいえ、残酷な自然界の掟だ。
ところが、奇跡的にその雛が生きている。
モフモフの羽毛に覆われた雛が落ち葉に潜り込むように佇んでいる。
人の気配に驚いた様子もなく動かないでいる。
巣から落ちた際、どこか傷ついているのではないかと、いぶかしむと足がまっすぐにのびきっている。
ただ見守るしかない。
最初に出会ってから2週間がたつ。
少し行動範囲が広がっているようである。
歩き回ることもままならず、土の上を啄んでいるのは蟻を食んでいるようだ。
体も大きくなり縞模様もはっきりとしてきた。
野良猫やカラスに狙われるのではないかと心配だ。
1週間後にはこの公園で夏祭りが開かれる。
人に見つかってストレスにならないだろうか。
このまま無事に育つのだろうか。
大きくなっても、傷ついた体で狩りをすることができるのだろうか。
心配事が頭をよぎるばかり。
スコールのような大雨、うだるような36℃越えの暑さの後、朝早くから雛はどうしているかと居場所を探し、毛づくろいをする姿を見つけては、胸を撫でおろす日が続く。
【ツミの雛】
【巣立ったツミ】
【青くエレガントな姿のオナガ】