なんちゃって登山
2025.09.16

20歳代半ばのころ、八ヶ岳連峰の最南端に位置する標高2,524mの編笠山という山に友人と3人で登山したことがある。レジャー目的で滞在していた小淵沢の別荘で、遊ぶことに尽きた自分らは、近くの編笠山に登ろう! と安易な考えが発案され実行することになった。当然事前準備もなく、服装は普段着、靴はスニーカー、リュックには水とハワイ土産のマカデミアナッツチョコを携えて・・・。無謀なトライであることに気づいたのは、登り始めて3時間を過ぎたころ、頂上手前の登山道が、その時の感覚で言うとほぼ垂直に近い岩場を、梯子や鎖をたよりに登らなくてはならなくなったときだった。ただ、不思議なことにその地点で「下山しよう」なんて選択肢は自分らにはなかった。「ここまで登ってきたんだ。最後まで登ってやろう」と。そんなこんなで4時間ほどかけて登頂した3人は若いとはいえ皆へろへろ、頂上で唯一食糧として持参したマカデミアナッツチョコを3人でむさぼるように食べた思い出がある。
時を経て、60歳代となった今、連休があると大好きな温泉とドライブに行くことが多くなった。 先だっては、福島県の裏磐梯にあるとあるホテルに泊まり温泉を堪能し、翌日、磐梯吾妻スカイラインを走り浄土平へ行った。目的は標高1,707mの吾妻小富士に登ることである。吾妻小富士は富士山のようなすり鉢状の形をした活山である。(休火山みえるが・・・)では何故、吾妻小富士かというと、浄土平から10分程で登れてしまうからである。60歳を超えた私は、体力の低下を痛感していて、これまで健康維持で行っていたウォーキングでは足腰の筋力を維持するには物足りず、本格的な登山は無理としても、「軽登山であればいける!」ということで、なんちゃって登山へ目を向けたわけである。

吾妻小富士登山口から山頂を仰ぐ
ということで、登り始めた吾妻小富士、登山道は整備され丸太で階段状に作られているのだが、なにせ歩幅が合わない。どちらかの足ばかりが踏み出す足になってしまう。何とかバランス良く調整しつつ、息をゼイゼイさせながら事前情報通り約10分で登り切ることができた。そこで達成感を感じるかと思いきや、大きな衝撃が・・・
なななんと、正面には、立っている位置より高い山がそびえたっているではないか! 10分で登れる山があるわけがなかったのである。しかも、その稜線を人が歩いているのが小さく見える! 傍らの看板を見ると1周40分で周回できるとのこと。
この場で達成感を味わっていいものか、5分程休憩しながら悩んだ末、周回することにした。

吾妻小富士の火口と稜線
意を決して登り始めた周回コース、ここまでの登山道と違いガラ場を登っていくのだが、遠目には緩やかな傾斜に見えた登りが、結構きつい! なんとか頑張り、スタート地点の反対側までたどり着いたとき、火口の外側を見渡すと、福島市街を一望することができた。かなりの絶景である。
これだけの絶景を眺めると、それまでの疲れが吹っ飛び、難なく登山を終えることができた。
帰りしな、磐梯吾妻スカイラインを福島側に下り、その途中にある高湯温泉で汗を流し、帰路につくため福島市内を車で走行していると、やまなみのなかに富士山の形に似た吾妻小富士を発見。すかさずコンビニの駐車場に車を止め写真を撮った。感動! あの山の上に自分は立っていたのだと。

福島市内から望む吾妻小富士
こうして、なんちゃって登山に味を占めた自分は、日を改め、同じ浄土平を起点として登る標高1,948.8mの一切経山にも登っている。当初は、体力維持を目的としていたが、いざ登ってみると、様々な感動と発見があり、本格的に山に登る登山家の気持ちがわかったような気がする。
今後も身の丈にあった「なんちゃって登山」、続けていきたい。