十年
2022.12.12
「言葉にすればわずか二文字だが、生きてみれば随分長い年月だったな」
「お前の言う通り10年は、人を腐らせるには十分な長さだったようだ」
10年前、鳥羽伏見の戦いの後、不殺を誓った私は日本全国を流れ、弱い者の為に剣を振るっていた。…らカッコイイな。
明治11年の世を描くこの作品と出会ったのは20余年前、私が小学生の時だった。
過去に多くの罪を犯し、その贖罪の為に剣を振るう主人公の姿が当時の私にはたまらなくカッコよく見えた。
丁度その頃漫画を描くという趣味にも出会った。赤髪の彼との出会い=漫画描きとしての出発だったのだ。
そこから10年、私は漫画を描き、腕を上げ、肉体的に成熟し、今の伴侶と出会い、大学のサークルの会長になり、少年は大人になった。
彼との出会いが私の方向性を決めたとも言えるかもしれない。
さて、そこから10年、私は成長出来たろうか?
仕事を覚え、結婚し、子供を作り、社会的には成長したと言えなくもない。
そんな時、再び彼に出会った。彼は2次元から3次元になっていた。別の彼は北海道という新天地を歩き始めた。
そして今なお新しい物語を紡ごうとしている。
私はというと、漫画を…描かなくなった。
30過ぎて体が重くなってきた事を言い訳に、あの頃の情熱を失ってしまった。
時代はアナログからデジタルに移行し、さらにはAIが人より上手に絵を描くようになった。そ
もそもホントに漫画を描く事が好きだったのだろうか?
「十年」
言葉にすればわずか二文字だが、人を変えるには十分な時間だったと思う。
何が幸せなのかは判らないが、次の10年は後悔のないように生きて行きたい。
流浪人ドゥーン