「男はつらいよ」最新作の試写会
京成線柴又駅前の寅さん像
くじ運のない自分に、特別試写会の当選はがきが送られてきた。
「男はつらいよ」シリーズ最終作となった第48作が公開されてから、24年の月日が流れた。
その間、幾度となく企画されるTVでの再放送や全巻買い揃えたDVDを繰り返し、繰り返し、何度も何度も飽きもせず観ている。
今回は劇場の大型スクリーンで、あの寅さんに会えるのだ。
久しぶりに感じる嬉しさと懐かしさに心が震えていることが照れくさい。
期待に胸が膨らむ。
この映画は1969年から1995年の間、全48作が公開された。一人の役者が全作品の主役を演じている世界最長の映画シリーズとして、ギネスブックに認定されている。
国民的娯楽映画として映画史上に名を残しており、今年は第1作が公開されてから50年になる記念の年である。
主役の車寅次郎、通称フーテンの寅を演じた渥美清さんがこの世を去ったことでシリーズは終わったのだが、根強いファンの声に応えて山田洋次監督が2年をかけて新作を製作したという。
現代の進歩した映像技術で寅さんが蘇るのだと想像を膨らませるのだが、共演者も年齢を重ねており、主役だけが若いままでは成り立たないだろう。
回想シーンだけなのだろうか。
おいちゃん、おばちゃん、タコ社長、ポンシュウも他界してしまっている。
今回の作品には、シリーズ後半の顔となった、かつては国民的美少女といわれた後藤久美子も出演するそうだ。
吸い込まれるような美しい顔と小麦色の肌を誇っていた彼女も、45歳になった。
マドンナ役として4作品に出演した浅丘ルリ子も既に高齢である。
妹役の倍賞千恵子や夏木マリも同様である。
やはり渥美清さんのCGでの出演は無理があるだろう。
いずれにしても寅さんの登場シーンが気になるところだ。
最近、若い人にフーテンの寅さんを知っているかと尋ねてみた。
30代の方だと名前は聞いたことがある程度で、20代になるとまず知らない。
映画のストーリーの面白さはもちろん渥美清さんの演じるテキヤ稼業の渡世人(とせいにん)、寅さんの魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと思う。
勝手気ままに旅に出て、実家の葛飾柴又の団子屋「くるまや」にふらりと帰ってくれば、必ず騒動起こす。
そしてまた傷心のうちに旅に出る。
寅さんを取り巻く人々は喧嘩をしたり悪態をつかれたりするのだが、やっぱり寅さんを心配して帰りを待つという昭和半ばの庶民生活を舞台にした人情喜劇だ。
まず寅さんの言葉に惹かれる。「生きてる?そら結構だ」「お前もいずれ恋をするんだな。あぁ可哀そうに」「男ってものはな、引き際が肝心よ」寅さんの言葉は簡潔で心に沁みる。
また、テキヤが使う啖呵売(たんかばい)の口上の妙にも楽しまされる。
「私、生まれも育ちも葛飾柴又です…人呼んでフーテンの寅と発します」「けっこう毛だらけ、猫灰だらけ…」「国の始まりが大和国…泥棒の始まりが石川の五右衛門、助平の始まりが小平の義男…」等々。
理解してもらうには映画を観てもらうのが一番。
必ずや涙することは間違いない。
それが悲しいのか、嬉しいのかわからない。
とにかく感動の涙なのだ。
長年のファンになると寅さんが登場するだけで涙がこぼれるというのは、よくある話だ。
この感覚は観れば理解していただけると思う。
さて、劇場でまた泣いて来るとしよう。
(12月27日全国ロードショー「男はつらいよ50お帰り寅さん」)
試写会招待状
寅さんコレクションの一部