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藤の花

 満開の桜があっという間に散ると共に、来年の春に思いを馳せる気持ちが湧く自分のせっかちさに恥ずかしさを感じてしまう。春に咲く花は桜だけではない。紫に彩られる藤の花の美しさは格別なものがある。

 このゴールデンウイークに藤の花で有名な、栃木県足利市にある「あしかがフラワーパーク」を訪れた。以前からTVや雑誌で紹介されていたものの、渋滞や園内の混雑を想像すると足が遠のいていたのだが、意を決し、いざ出発となった。

 10時開園と同時入場では、渋滞や駐車場混雑、チケット窓口も長蛇の列になると予想し、早朝に出かけた。チケットも苦手なスマホによる登録から購入までやっとの思いで事前購入を済ませた。

 この日はゴールデンウイークでも平日のためか、思ったほどの混雑には遭遇せずに入園できた。タイミングも良かったのか、6000台収容の駐車場でもラッキーなことに入場口に近いスペースに停めることができた。園内に足を踏み入れた途端、息を呑む光景が目に飛び込んできた。薄紫の藤の花が一面に広がっているではないか。それが視界一杯に咲き誇っている。これが噂に聞く「大藤」なのかと説明を読むと、大藤と呼ばれるものは4本あり、目にしたのは「大長藤(野田九尺藤)」というその内の一本で、通常の藤よりも花が長く垂れ下がる種類であることがわかった。風にそよぐ花の香りに脳内が癒されていくのを感じる。

「大藤」は、足利市内の都市再開発の際、伐採せず移植したいという地元の強い要望に、一人の女性樹木医が悩んだ末に引き受けたことが始まりである。当時、直径1メートルを超す藤は、幹が柔らかく、もろいため移植は不可能とされていたが、様々な工夫を施しながら移植が始まった。移植前の幹回りは3.5メートル、棚面積は600㎡あったが、これを2回に分けて72㎡にまで縮小させた。移植先のフラワーパークの土地には250トンもの炭が敷き詰められ土壌改良も進められていた。棚の寸法は、縦12メートル、横6メートルで大型クレーンで幹と棚を同時に吊り上げ、トレーラーで運搬する。その際、幹を傷つけないように人が使う骨折治療用のギプスにヒントを得て、石膏包帯を幹に巻き付けた。そして1996年移動が終了し、2か月後には芽吹き始め、翌年5月には無事花をつけるに至った。このプロジェクトに要した期間はまる3年、延べ2000名の人の努力によって日本で初となる大藤の移植が成功したのである。現在の棚の広さは、移植当時の10倍以上になり、畳600枚分にもなる。「奇跡の大藤」と言われるゆえんである。

 さて、残り3本の「大藤」も見事に咲き誇り、丁度見ごろを迎えていた。その内のひとつは、「八重藤(八重黒龍藤)」という別名「牡丹藤」とも呼ばれる、八重の花を咲かせる品種である。色はやや濃い紫で、コロコロとしたまるでブドウのような花をつけ、香りが強く感じられた。園内には、この日一番の見ごろを迎えていた白藤の80メートルにも及ぶ「白藤トンネル」は圧巻で、他にも白藤の滝、紫藤のスクリーン、藤のドーム、きばな藤、ツツジやシャクナゲ、大手毬、カラー、クレマチス等が咲き乱れる園内を充分すぎるほど散策してきた。まだまだ観足りない気持ちをもちつつ、歩き疲れには勝てず藤棚を後にした。来年は、世界的にも有名になったライトアップされた大藤の花を是非観にきたいものである。